折り図集の復刊について思うこと

先日から、おりがみはうす BBS で、復刊についての話題が出ていて、そのなかの、とある書き込みの中から引用。

おりがみはうすのことを知って本格的に熱中しはじめてからまだ10年少々と日が浅く(以下略)

「10 年少々」やってても「日が浅い」。折紙道、奥深し。いや、それは関係なくて、別の書き込みから引用。

現状でさえ、海外の人がおりがみはうすの本をごっそりコピーしたファイルを持って悪びれも無く歩いてる姿をイベント会場で見かけるのです。

ええと、その、それは本当に「不当なコピー」なのでしょうか、というのが気になってしまいました。

もしかしたら、きちんと対価を支払って折り図集を何冊も購入した上で、その中からお気に入りの作品だけをコピーしてファイリングしているのかもしれないのでは、と思ったり。そうだとしたら悪びれないのが当たり前ではないかと……。

同じ書き込みから、さらに引用。

日本折紙学会の会員になり、週末に東京へ来ていただければ、本を閲覧していただくことができます。
そこまでのお金や時間がかけられないとおっしゃるなら、にしけんさんにとって、残念ながらこれらの本はその程度の価値であると受け止めざるを得ません。

それはちょっと極論かと……。どうしてこの書き込みに対して、いわゆる「地方」の住人から反論が出ないのか、不思議。

たとえば私が北海道に住んでたとします。まず、東京までの飛行機代が必要です。

おりがみはうすに行ってもコピーがとれるわけではないので、その場で折って覚えなくてはならないわけです(メモをとるにしても、基本的なところは覚える必要があります)。一般的に、おりがみはうすの折り図は、慣れた人でも一作品あたり数時間は必要です。はじめて折る作品を、しかも忘れないようメモをとりながら折る、となると、一日かけても折りきれないかもしれません。

とりあえず、「折り図の作品を折る(覚える)」という目的の場合、北海道から日帰りというのは、現実的ではありません。二泊三日の旅行プランを組んでも、せいぜい 2 作品しか折れない(覚えられない)でしょう。

そうすると、飛行機代+二泊の費用が必要です。これだけ支出しても、北海道に戻って、いざ折りなおそうと思ったら、メモを見てもどうにも思い出せないかもしれません。そうしたら、再度「飛行機代+二泊」でしょうか? 普通の家庭は、そう頻繁に二泊旅行ができるほど裕福ではありません。これは折紙にかける情熱とは別次元の問題です。

「北海道は極論だろう」というのは、確かにそうですが、東北も中国四国も九州も、さして事情は変わりません。飛行機代が新幹線代に変わるだけです。

日本全体の半分くらいの地域の住民は、「週末に東京に行って本を閲覧する」という選択肢を、事実上持っていません。可能か不可能か、と迫られればもちろん不可能ではないですが、あまりに非現実的です。

もう一度引用します。

そこまでのお金や時間がかけられないとおっしゃるなら、にしけんさんにとって、残念ながらこれらの本はその程度の価値であると受け止めざるを得ません。

この、にしけんさんが、どこにお住まいなのか知りませんが、とりあえず私は、「そこまでのお金や時間」はかけられません(きっぱり)。「週末に東京に行けない」というのは、居住地域によっては不可抗力の現実なのです。だから、「東京に行かない(行けない)」ことを理由に、「これらの本はその程度の価値であると受け止めざるを得ません」みたいなことを言われるのは、ちょっと心外です。

書きながら、こんなのを思いつきました。

  • 「週末に東京に行って本を閲覧する」ことが可能な人は、全員、絶版になっている折り図集を日本折紙学会図書館に寄贈する。
  • 寄贈された折り図集は、居住地域の都合で「週末に東京に行けない人」のための貸し出し用として利用する。
  • もちろん、人件費や郵送料、本が破損した場合の修復費用も、借りる人の負担とする。
  • 最悪の場合、盗難、紛失などが考えられるので、寄贈された折り図集のうち状態のよい 2、3 冊を門外不出の永久保存版とする。永久保存版以外のすべてが失われた場合は、郵送による貸し出しを中止する。

もし、書き込みの内容どおり、価値を認める人は週末に東京に行って閲覧できるはず(それで用が足りるはず)という前提であれば、それなりに現実的な運用だと思います。

ええと、その、また長くなってしまいました。言いたかったのは、こういうこと↓です。

「東京に行って閲覧する」というのは、非現実的であると思った。そういう非現実的なことを盾にして、東京に来ない人が悪い、みたいに言うのは、ちょっとどうかと思った。

で、私自身はというと、コンプレックスを折るだけの技術はないので、おりがみはうすの折り図集は原則すべて「猫に小判」です。失礼しました。